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福岡地方裁判所 昭和39年(行ウ)5号 判決 1965年10月12日

原告 中尾松太郎 外一名

被告 福岡国税局長

訴訟代理人 斉藤健 外三名

主文

原告らの訴えはいずれもこれを却下する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事  実 <省略>

理由

先づ原告らの本件訴の適否について判断する。

原告らが本件昭和三八年八月二九日付法人税の納付通知につき夫々国税通則法第七六条第一項により異議申立をなし、同年九月一三日付棄却の決定があつたこと、原告らが右決定に対し同法第七九条第三項による審査請求を為さず、また本件同年九月一六日付源泉所得税の納付通知につき同法第七六条以下の不服申立の手続を経ていないことは当事者間に争がなく、原告らが右棄却決定を同年九月一三日に、右源泉所得税の納付処分を同年九月一六日に告知を受けたことは原告らの自認するところである。

原告らは該納付通知による原告らの第二次納税義務は納税者たる訴外会社の納税義務の存在を前提とするものであり、後者が否定されれば当然前者も否定される関係にあるから、原告松太郎が訴外会社の元清算人として、訴外会社の法人税の再更正について不服申立の手続を経ている以上原告らに対する第二次納税義務者としてての納付通知についてあらためて不服の申立の手続を経なくてもその取消を求める訴は行政事件訴訟法第八条第二項第三号により適法である旨主張する。しかしながら納税者に対する法人税の再更正は、同人の滞納源泉所得税の第二次納税義務者に対する納付通知はもとより同人の滞納法人税の第二次納税義務者に対するそれとも全く別個独立の行政処分であるから、国税通則法第八七条第一項により別個に不服申立の手続を経なければ出訴し得ないところ、本件の場合たまたま原告松太郎が納税者たる訴外会社に対する法人税の再更正処分について不服申立をした訴外会社の元清算人と同一人であつたとの一事をもつてしては、原告松太郎が訴外会社の滞納源泉所得税の第二次納税義務を、原告クニが訴外会社の滞納法人税、同源泉所得税の第二次納税義務を有するものとしてなした各納付通知の取消を求める訴えはもとより、原告松太郎が訴外会社の滞納法人税の第二次納税義務を有するものとしてした納付通知の取消を求める訴えを提起するについても該納付通知について国税通則法の規定する不服申立の手続を経ないことに正当の理由があるものとは到底言いえない。

よつて原告らの本件訴えはその余の判断をするまでもなく、いずれも行政事件訴訟法第八条第一項但書、国税通則法第八七条第二項の規定により不適法なものとしてこれを却下すべく、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 江崎弥 鍋山健 西田光彦)

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